Body Heat LP Cover

 不思議なめぐり合わせである。

 悶々としていた20代初め、地元にALTECの大きなスピーカーが鎮座したJAZZ喫茶が開店したのでよく聴きに行っていた。マスターは客の顔を見ながら数千枚はあるレコードを選曲して聴かせてくれたものである。

 とある日も店に入って濃いめのコーヒーをすすっていると、なにやら胸をかきむしられる様な切ない曲が流れてきた。Quincy Jones のアルバム Body Heat、Everything Must Change である。ガンガンとした音量で聴くその曲は、その頃の自分の心境を大いに癒してくれた。

 数年後、マスター主導で県都でのコンサートに向かう Ray Brown ご一行 (MJQ) を店にお迎えし、一夜限りのスペシャルコンサートが行われた。同道していたのは Quincy Jones だった。


 あれから30年は経ったであろうか。

 ミレニアム騒ぎが落ち着いた頃、県都のデパート内のバージンレコード店をウロウロしていると、投げ売りコーナーで若い女性ボーカリストが写り込んでいるCDが目に止まった。曲名が Everything Must Change と云う事もあり、どんな歌い方をしているんだろうと興味が湧き手に入れた。ワンコインだった。自宅で早速試聴すると、かの若かりし頃ほとんど毎日聴いていた Quincy Jones とは異なる、なにやらしっとりとした歌い方で心地良い。Lady Kimである。以来、CDプレーヤD/A変換方式比較試聴時のリファレンスとなっている。
Everything Must Change Lady Kim

 そして金環食騒ぎの年の桜の季節、JAZZを楽しんでいる娘達と Everything Must Change に話しがおよび、Lady Kim との返答。最近CDを買い込んで聴いていたらしい。あわてて、オリジナルはこっちと40年ものにならんとする Quincy Jones の曲を聴かせてしまった次第。

 不思議なめぐり合わせである。


Return